アキハバラ@Deep

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アキハバラ@DEEP
アキハバラ@DEEP
posted with amazlet on 06.10.16
石田 衣良
文藝春秋

深夜ドラマで放送されていた同作の映像化を先に見ており、面白いと思ったので通勤のお供にと原作にも手を出してみました。が……。
正直な感想としては、今一歩の感がどうしても拭えない佳作というところ。

横溢なる知識を持ちながら重度の吃音症を抱える「ページ」
秀逸なデザインセンスの持ち主ながら病的なまでの潔癖症である「ボックス」
独特のリズム感を持つ天才DTMアーティストだが時折原因不明の"フリーズ"を起こす「タイコ」

彼ら3人に

色素欠乏症の天才ハッカー/プログラマー「イズム」
コスプレ喫茶のアイドルにしてキャットファイトの女王「アキラ」
10年に及ぶ引きこもり暦を持つ「ダルマ」

を加えた6名が零細ベンチャーIT企業「アキハバラ@Deep」を立ち上げ、立ちふさがる巨悪を艱難辛苦の末に打ち破り「彼らならではの」勝利を収める一種のサクセスストーリーというのが大まかな梗概。欠点と長所を併せ持つ主人公たちのカッコ良さ/悪さ、愛しさ、etc を感じるほど(TV版とは違いますが)とても「キャラが立ってる」と感じられました。中でも彼らの「戦い」の中で、彼らの「欠陥」がひとつの「勝利」を呼ぶシーンなんて、ページのカッコ良さにシビレた!さすがに惚れたり憧れたりはしませんでしたけど(笑)

さて、そんな魅力的な彼らが織り成す物語がなぜ「いまひとつ」か。
ひとつは、繊細とも取れる心情描写に対し、情景などの一部の描写に力が感じられない事。アキハバラという特定の街を舞台にしている為か、万世橋、昌平通という固有の地名に頼った描写が多く、アキハバラという街を知らない人は置き去りの感が有ります。また特定の固有名詞で、ひどく違和感を禁じえなかったのは「さまぁ~ず」が(名前だけとはいえ)何の脈絡も無く「風景セットのひとつとして」登場した事。(電器店の店頭に陳列されているテレビに映っている、という程度の出番ですが。)別に「流行の芸人」でも良い筈なのになぜ殊更敢えて「さまぁ~ず」なのか。さまぁ~ずを知らない世代はどう解釈したらいいのか。10年、20年後に読んだ人間は?(そこまで考えないか、普通。)なんだか読む側に「基礎知識」を求められているような気がして興醒めといった趣。

またひとつは、頻度はともかくも散見する「用語の誤用」により、上がりかけたテンションがカクッっと急落するような思いをした箇所が有った事。恐らく、それなりに情報系の知識もあり、取材もきちんとこなすタイプの人だとは思うのですが…「細かいところが気になる性格」の「情報系出身者」にとってはその辺りの齟齬が、読んでいて心地悪いのではないかと勝手に推察します。

さらに、物語の構成について言及します。この物語の「語り部」を担当するのが、彼らが制作したAI型サーチエンジン「クルーク」なるものなのですが、この「彼」が、話のオチ=アキハバラ@Deepの勝利を早々に断言し、後の部分はそのプロセスが語り綴られるという一種独特なストーリー展開となっています。これはこれで面白い手法なのですが…いかんせん、やはり「先が分かっている」戦いは読み手のドキドキ・ワクワクを少なからず損なっているという気がしてなりません。そして先にオチが語られているが故なのか、勝利の先のエピローグとも言うべき部分が、信じられないほど淡白になってしまっています。(「ラストの感動的な描写」というレビューを見かけた事がありますが、残念ながら私の感想は「尻切れトンボ」でした。)

大きく3段落に亘って酷評ばかり述べてしまいましたが、総じて括ると「深みが無い」の一言に尽きると思います。(友人の作者評に共感したので、その言葉をそのまま貰いました。)はやりモノとして、瑣末な事にとらわれずに作者特有の「勢い」を感じる事が出来れば良作となるかも知れません。が、後世に残る作品ではないと断言します。


因みに、「アキハバラ」の名を冠している事で「電車男」に見られるアキバ系の若者群像劇を想像する向きが有る様です。(同作を知らない人に書名を教えると、決まってそのニュアンスのレスポンスが帰ってきます。偏ったアキバ系文化を広めてしまった「電車男」の功罪とも言えます。)本作に登場する若者たちは、いわゆる「萌え」系文化に全くの無縁という訳では有りませんが、それよりむしろ古き良き時代(?)のプロフェッショナリズムを感じるアキバ住人の匂いを彼らから感じてしまうのは、私だけでしょうか。ホント、人物設定には高評価を進呈したいくらいなんですけどね。。。それなりに楽しんで読んでいたはずなのに、なぜこんな酷評になっているのか、自分でも不思議です。

おまけ:
他メディア展開(漫画、ドラマ、映画)<原作 
とする向きも有るようですが、私の場合、ことドラマに関しては原作より面白いと感じました。原作のテーマなど全てぶっ飛んでしまってますし、彼ら@Deepの目指す場所も全く変わってしまっていますが、少なくとも矛盾を吹き飛ばすくらいのパワーがキャストの好演・怪演に有りましたw
(えっと、ユイさん(本庄まなみ)の演技は…でしたけどwww)

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このページは、Komarchが2006年10月16日 09:25に書いたブログ記事です。

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